能ガキブログ

能楽初心者が未知の楽しみを追求するブログ

能は幻視を発動させる装置

2冊目として、こちらの本を手に取りました。

著者は、初めての能で「松風」を鑑賞中、水面に浮かぶ月の風景を幻視したそうです。それをキッカケとして能にハマり、能楽師にまでなられています。本書は入門書に相応しく、能楽の歴史や、特徴や仕組み、効能などがカバーされていました。

能は消費の対象ではない

最も印象的だったのは、エンタメを消費するという感覚です。

私たちは映画などをお金を払って「消費」していると著者は主張します。つまり、受け身な姿勢で鑑賞している。現代人にとっては当たり前のことなのですが、能は「消費」の対象ではないようです。

能は、鑑賞側の能動性が求められ「観る」のではなく、能と「共に生きる」心構えが必要だとあります。具体的には、以下のような行動が「共に生きる」ことになります。

  • 詞章(セリフ)を声に出して読んでみる
  • 謡や仕舞を習ってみる
  • 聖地巡礼をする、など・・

なかなかハードル高めですが、そうする事で「妄想力」が鍛えられ、能の見え方が変化するようです。こんなに要求が多いエンタメもあるんですね。笑

そもそも能は、限られた要素を使って鑑賞者の妄想力を刺激し、幻視を発動させる装置とも言えるようです。そういった考え方は今のARやVRにも通じるものらしく、改めて能が見直されています。古典と最新技術の融合ってなんかカッコ良いですよね。