能ガキブログ

能楽初心者が未知の楽しみを追求するブログ

能は観客を甘やかさない

前回の投稿で触れた書籍の著者の安田登さんが、メディア環境研究所のサイトで能楽師の視点からVRを論じられていました。

mekanken.com

そこに、「鑑賞側の能動性が求められる」能の特徴が端的に表現されていたので、ここに引用します。

能を初めて見た人の大半は「わからない」と思います。能楽師はわざと半分ほどしか情報を見せない。そこには「これを知りたかったら、あなたたちがここに来なさい」というメッセージが込められています。「自分には理解できない」と思った観客は、そこで諦める人もいます。しかし、さらに学んで修練しようと考える人がいます。前者に与えられる芸能は他律(ヘテロノミー)の芸能。ハリウッドの映画などがそうですね。しかし、能は自律(オートノミー)の芸能です。自律的な芸能は、その人が進歩すればするほど面白くなる。

能は観客を甘やかさない。それはその人を信じているからです。ARやVRも、すべてを提示するのではなく、ユーザーを甘やかさないことが大事なのだと思っています。

私のように、何だか分からないけどハマってしまう能の秘密は、ここにあるのかもしれません。