正法寺ろうそく能とは
世阿弥は1434年(永享6年)、72歳の時に佐渡配流となりました。世阿弥が逗留した正法寺の本堂で、毎年6月に幻想的なろうそくの明かりの中で世阿弥を偲ぶ奉納能が行われます。今年は6月28日(金)に開催されました。
こちらの本で正法寺ろうそく能の存在を知りました。
ろうそく能のチケットはこちらで事前購入しました。
チケットは13,900円で、新潟ー佐渡(両津港)のカーフェリー・ジェットフォイル往復乗船代を含みます。
ジェットフォイルの一般旅客運賃(往復)が13,490円ですので、残りの410円が奉納金+手数料になる計算になります。佐渡に1泊以上宿泊することが購入条件になっているのでご注意を。
乗船前ににぎり米でコシヒカリの握りたておむすびをテイクアウトしました。本場の味は美味しかったです。
佐渡汽船乗り場のコンビニに佐渡の海洋深層水のベットボトルがあったので買いました。
佐渡に到着し、両津港からバスに乗って国中エリアに向かいます。佐渡島を40分くらい横断します。
国中エリアに宿を取りました。宿で自転車をレンタルできました。
腹ごしらえのため、地元の人にも人気の回転寿司屋すしやまるいし本店に行きました。地物の魚と佐渡産コシヒカリを使っています。すでに佐渡を満喫した気分でした。
自転車で10分くらいで正法寺に到着です。
舞台と見所(客席)はこんな感じです。
スペースにゆとりがなく、かなり混み合っています。チケット購入時に500円プラスするとSS席にアップグレードできたので私は1列目の席でした。
席に付いて初めて分かったのですが、1列目には座布団が、2列目以降は低めの座椅子が付いていました。腰に問題のある方は2列目以降がいいかもしれません。
1列目から舞台はこのように見えました。舞台周りに点在する白い紙がくるっと巻かれたものが燭台です。
ろうそく能のプログラムは
- 浄道場
- 講演
- 能演「半蔀(はじとみ)」
浄道場では、僧侶や信者の方々が仏様に祈りを捧げ、場を清めます。
講演は古典芸能解説者の葛西聖司さんが半蔀(はじとみ)の解説をされました。まさに最初に紹介した本の著者です。毎年ろうそく能で解説をされているご縁で、自著に紹介されたのかもしれませんね。
講演の後、僧侶の方が蝋燭を灯し能演が始まりました。蝋燭の光だけでは光量が足りないのか天井の電灯も付けたままでの能演でした。
「半蔀(はじとみ)」では、源氏物語でお馴染みの夕顔が霊として光源氏との恋を語り舞います。半蔀とは、蔀戸(しとみど)という上半分の戸を外側上部に吊り上げるようにして開く戸がついた庵のことで、白い夕顔の花が絡まった蔀戸から夕顔の霊が登場します。
私の席の真正面に設置された半蔀の作り物(小道具)から夕顔が登場するシーンは、夕顔の面に蝋燭の光があたりとても幻想的で美しかったです。能面の下にはおじさんの顔があることをすっかり忘れるくらいドキッと心奪われました。光源氏も蔀戸から見え隠れする夕顔の姿に興味をそそられたのでしょう。とても印象的でした。
公演後に、世阿弥持参と伝えられる寺宝「神事面べしみ(通称:雨乞いの面)」が公開されました。鎌倉後期作とされ、世阿弥が雨乞いの舞に使ったと伝わっています。
こちらで紹介した小説「世阿弥最後の花」の中でも、持参した面で世阿弥が雨乞能を舞います。
雨を誘うためにこんな厳つい面をつけるんですね。ちなみに小説内ではその面は観阿弥の遺品という設定でしたが、それは創作のようです。
終わったのは21時過ぎでした。バスなどの交通機関は機能していない時間帯ですので、私は自転車で宿まで帰りました。
念願の正法寺ろうそく能、手作り感溢れるイベントで、地元の方々の暖かい世阿弥愛・能楽愛を感じました。観客は本島の都心部からの方が半数以上で、中には著名な作家の方もいらっしゃったようです。きっと私と同じように都心部のストレスから逃げるように、自然に囲まれてのんびり能を鑑賞できる環境を求めている方が多いのかもしれません。